いろいろな藻類

このページでは、顕微鏡サイズの藻類(微細藻類)から目で見えるサイズの藻類まで、様々な藻類について、写真や論文などとともに紹介します。

クロレラ

Chlorella

 多くのサプリメントが販売されていて、名前としては比較的有名な微細藻類です。微細藻類を食品やサプリメントなどとして利用するために大量培養する研究は、1950年頃からスタートしていますが、その際培養されたのがクロレラです。

 緑色の丸い細胞で、形態的な特徴がほとんどありません。顕微鏡写真で、丸くて緑色=クロレラでないことも多いので、実際の同定は難しい種類です。

 研究は日本でも行われ、特にTamiya(1957)では、当時の日本で行われた研究が詳しく解説されています。約70年前の論文ですが、現在にも通じる非常に興味深い論文です。

 大量培養を、屋外で年間通じて行う場合、クロレラをはじめ、多くの微細藻類は、春と秋の気候では良く増殖します。しかし、夏の高温時と冬の低温時は増殖が悪くなります。そのため、夏の高温や冬の低温でも良く増殖する培養株(培養株については、イカダモの世界の中のイカダモの研究で詳しく紹介)が必要です。Tamiya(1957)では、夏の高温時にも良く増殖するクロレラの「好熱株」と夏は苦手だがその他の季節に良く増殖する「中温株」を使って、年間を通じたクロレラの生産ができることを報告しています。

 また、大量培養時の他の生物の侵入(コンタミネーション、以後コンタミと略)も課題であること、下水を利用して微細藻類を培養すること、クロレラがタンパク質・脂質・ビタミン類を含んだ資源として食品に利用できる可能性などにも触れられており、現在微細藻類の研究の最先端の研究課題が1950年当時に提起されています。

 微細藻類研究=クロレラ研究というぐらい、微細藻類の研究対象となってきました。1900年以降2025年までに出版され、データベースで検索ができる微細藻類研究論文(約65万論文)について、対象種を調べたところ、研究対象とされた微細藻類の第1位はクロレラChlorella(約20万論文、約30%)でした。ちなみに2位は、イカダモのScenedesmus約15万論文、3位はSpirulina約9万論文、僅差で4位はChlamydomonas約9万論文、5位はEuglena約5万論文です。クロレラには、これからも微細藻類研究を背負って活躍してもらいましょう。

Tamiya (1957) Annual Review of Plant Physiology, 8, 309-334

ヘマトコッカス

Haematococcus

 ヘマトコッカスは、赤色のアスタキサンチンを産生する微細藻類です。アスタキサンチンは、ニンジンの色とか、トマトの色と同じ仲間の化学物質(カロテノイド)です。化粧品や医薬品に利用できる物質で、化粧品としてはすでに色々な製品が販売されています。

 ヘマトコッカスは下の写真一番左側のような形で泳ぎます。緑色で細胞の先端に鞭毛(べんもう)と呼ばれる毛のような器官を2本もっています。光合成を行う生物は、動かない、というイメージがありますが、とても元気に泳ぎ回る微細藻類です。細胞の周辺に透明な部分もあって、不思議な形をしていますね。この状態で分裂して増殖します。

 その後、周りの環境が増殖に適さなくなると、写真真ん中のように赤い色素を細胞いっぱいに蓄積します。この色素がアスタキサンチンです。アスタキサンチンの蓄積のきっかけになるのは、強い光や水の中の成分の違いで、ヘマトコッカスは、自分を守るためにアスタキサンチンを作り出すと考えられています。

 自然界でヘマトコッカスが生息していることを認識できるのは、この赤い細胞が局所的に集まっている状態の時です。写真一番右側のコンクリートの赤く変色している部分を採取して顕微鏡で観察すると、赤い細胞がいっぱい存在しています。採取した赤いヘマトコッカスを栄養素の入った水(培地)に入れ、2、3日すると、緑色の細胞がたくさん現れてきます。

 分裂に条件が揃った水たまりに侵入した細胞が、まずは緑色で増殖した後、水たまりが干上がってしまい、増殖した細胞が一斉にアスタキサンチンを蓄積し、赤い細胞になったと思われます。

 カラカラに乾燥したとしても、培地に入れると、復活してきます。私が試したところでは、採取して5年以上乾燥させて保管していた赤い細胞(見た目は赤黒い粉末状です)からも緑色の細胞が出てきました。長い間、どのように眠りにつくのか、そのメカニズムはとても不思議です。大量に存在するアスタキサンチンも眠りに関係しているとは思うのですが・・・。

 学名のHaematococcusのHaematoは「血」を表します。-coccusというのは、「丸い」という意味で、赤い細胞のことをうまく表しています。

 アスタキサンチンを作るヘマトコッカスは、学名ではHaematococcus lacustrisHaematococcus pluvialisとされている文献もあり)という種が広く知られていました。世界中のヘマトコッカスは、この1種のみではないかという研究もありました(Buchheim et al. 2013)。

 しかし、Allewaert et al.(2015)は、主にユーロッパで見つかったヘマトコッカスのDNAをさらに詳しく調べたところ、複数の種が存在していると報告しています。

 さらにBuchheim et al.(2023)もDNAを使った詳細な解析から、北アメリカからヘマトコッカスの新種を報告しています。ひょっとすると、地域ごとに、それぞれ違う種が存在するのかもしれません。現在、日本にどんな種類のヘマトコッカスが存在しているのか、研究中です。

Allewaert et al.(2015) Phycologia, 54(6), 583-598.
Buchheim et al.(2013) European Journal of Phycology, 48(3), 318-329.
Buchheim et al.(2023) Algaem 38(1), 1-22.

ユーグレナ

Euglena

 ユーグレナもクロレラと同じく非常に古くから研究されている微細藻類の一つです。また、ヘマトコッカスの緑色の細胞と同様に、ユーグレナもとても元気に泳ぎ回る微細藻類です。写真では見えにくいですが、細胞の先端の1本の鞭毛を上手に動かして泳ぎます。

 また、細胞そのものがぐにゃぐにゃと変形します。インターネットで「すじりもじり運動」と検索すると、多くの動画を見ることができます。細胞の中に赤い「眼点(がんてん)」という光を感じる器官があります。そして、細胞の中に、透明な楕円形の物質が見ることがあります。これが、「パラミロン」という物質で、現在、幅広い医薬効果が発見されて注目されている物質です。

 パラミロンには、食後の血糖値や内臓脂肪量を低下させる効果(Aoe et al. 2019)、免疫力をアップさせる作用(Kawano et al. 2023)、興味深い効能としては、疲労感軽減作用(Kawano et al. 2020)などがあることが判明しています。

 パラミロンは、デンプンと化学構造は非常によく似ています。どちらも、グルコースがつながった化学物質で、違いは、「つながり方」です。

 グルコースの炭素に、1から6まで番号をつけ、つながっている部分を見ると、デンプンは1と4で、パラミロンは、1と3でつながっています。デンプンは、多くの植物にみられ、“ヨウ素デンプン反応”の実験でもよく知られた物質です。細胞の中にデンプンを蓄積する種類も多くあります。パラミロンは、ユーグレナなどの少数の種類にみられる非常にまれな物質です。グルコースのつながり方の違いで、化学物質の働きとしても2つの物質には、大きな違いがあります。ユーグレナは、なぜ、デンプンでなくパラミロンを選んだのでしょうか・・・。

Aoe et al. (2019) Nutrients, 11, 1675
Kawano et al. (2020) Nutrients, 12, 3098
Kawano et al. (2023) Journal of Functional Foods, 109, 105804.

スピルリナ

Spirulina

 スピルリナは、人間の食経験のある微細藻類では一番歴史のある種類だと思われます。ラテンアメリカやアフリカなどでは、500年以上前にすでに湖に大増殖したスピルリナを採取し、乾燥させクッキーのようにして食べていたそうです(Habib et al. 2011)。

 サプリなどにもなる栄養価の高さを経験的に知っていたのでしょう。学名のSpiruliaは藻体がコイル状になるというラテン語に由来します。元気な生きたスピルリナを顕微鏡で見ていると、ぐるぐるとドリルのように螺旋状にゆっくり回転しています。

 サプリメントとしてそのまま食べることで利用されてきたスピルリナですが、スピルリナから抽出された青色色素(フィコシアニン)は、天然色素として食品にも利用されています。また、抗炎症作用や抗酸化作用があることも知られています(Shah et al. 2024)。

 フィコシアニンは、抽出が難しい物質でもあるので、μABプロジェクトの川喜田教授のチームでは、効率のよい濃縮抽出方法を研究しています(Hidane et al. 2025)。

Habib et al. (2011) FAO Fisheries and Aquaculture Circular No. 1034.
Hidane et al. (2025) Process Biochemistry, 149, 260-269.