藻類 Q & A
これまでに、藻類に関する様々な質問をいただきましたので、紹介いたします。藻類という生き物について少しでもご参考になれば幸いです。
Q:藻類は「もるい」と読むのか?
A:「そうるい」と読みます。
Q:藻類とは?
A:残念ながら、明確な定義がありません。光合成を行う生物で、「種子植物」、「コケ植物」、「シダ植物」に当てはまらない生物を「藻類」としてまとめています。
Q:何mm以下を微細藻類というのか?
A:顕微鏡レベルの藻類が「微細藻類」とよばれてはいますが、「何mm以下」のように明確な定義はありません。
Q:植物プランクトンと微細藻類の違いは?
A:水中に浮遊している微細藻類が植物プランクトンです。微細藻類には、水中に浮遊せず、付着して生活しているもの、さらには陸上で壁や木の幹の上で生活しているもの、他の生物の中で生きているものなど多様な種類が存在します。つまり、植物プランクトンは、微細藻類の中の一部ということです。
Q:藻類は何種類いるのか?
A:正確な数は不明です。AlgaeBase(https://www.algaebase.org)という藻類の学名をまとめたページには、現在(2025/1/8)約18万種の藻類の学名が記録されています。しかし、これは、名前が付けられた種のみであり、まだまだ未知の種が存在すると思われます。特に微細藻類は、顕微鏡を使わないと観察できない種がほとんどであるため、人間が、実際に存在する種類のうちどれぐらい認識しているのか全く分かりません。
Q:微細藻類はどうやって増えるのか?
A:一つの細胞のみ(単細胞)で生きている微細藻類は、多くの場合、二分裂して増えます。一つの細胞の内部で、二分裂が何回か起こり、複数の細胞になってから、外に飛び出す種類もあります。また、動物のように、オス、メスがあり、それぞれから精子に相当する細胞と卵子に相当する細胞が作られ、受精して「受精卵」をつくり、次の世代を残す種類もあります。
Q:微細藻類の二酸化炭素固定量はどれぐらいか?
A:微細藻類が光合成のみで増殖し、乾燥させた微細藻類の重さで1gの増加があった時、非常に単純化した計算では、約1.8gの二酸化炭素を固定したと推定されます。
(補足)乾燥させた微細藻類1gを、元素として考えると、炭素、窒素、リン・・・などもちろん、多くの元素を含んでいますが、一番多いのが、炭素で約50%を占めます。ですので、1g中ならば約0.5gが炭素ということです。その炭素の由来が空気中の二酸化炭素のみであるとします。ちなみに、二酸化炭素は、CO2で、炭素の原子量12、酸素の原子量16から、分子量は44です。44÷12≒3.67より、CO2は、炭素の約3.67倍の重さがあるということです。約0.5
gの炭素の元になったCO2は、約3.67倍の約1.8gと算出されます。
Q:微細藻類の二酸化炭素固定量は森林と比べてどうなのか?
A:微細藻類の多くは、海や湖などに水の中に生息していますが、地球上すべての微細藻類を合わせると、森林をはじめとする陸上植物と「ほぼ同量」の二酸化炭素を固定していると試算されています。
Q:微細藻類の増えるスピードは?
A:多くの微細藻類は、1、2日に一回分裂します。細菌類が数時間で一回分裂するのと比べると、非常に遅いスピードです。
Q:微細藻類の「餌(えさ)」は?
A:微細藻類を育てるために重要な「餌」=「栄養素」は、窒素、リン、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄などです。農業用の肥料の成分と似ています。とくに窒素は非常に重要です。また、微細藻類の中には、有機物(糖、有機酸など)を栄養として利用できる種類もあり、このような種類は、光が全くなくても、有機物がある水の中で増えることができます。
Q:微細藻類を観察するためには高額な(数百万円もするような)顕微鏡が必要か?
A:おおよその形を観察するためなら、高額な顕微鏡は必要ありません。倍率が200倍程度の顕微鏡でもイカダモ、クンショウモ、ボルボックス、ミカヅキモなどを観察可能です。高い倍率になると光源が付属している顕微鏡が良いでしょう。また、光源としては白色のLEDが見やすいです。スマートフォンを接眼部に取り付けでき、顕微鏡写真が撮影できるものが数千円から数万円で市販されています。
Q:オーランチオキトリウムは藻類か?
A:違います。オーランチオキトリウムは葉緑体をもたず、光合成をしません。
Q:ミドリゾウリムシは藻類か?ミドリムシと違うのか?
A:違います。ミドリムシは藻類ですが、ミドリゾウリムシは藻類ではなく繊毛虫です。ミドリゾウリムシが緑色なのは、クロレラを捕食後、体内に「保持」しているからです。「保持」と書きましたが、単純なものではなく、クロレラは、ミドリゾウリムシの中で、まだ生きていて、それぞれがお互い“もちつもたれつ”の共生関係を作っているようです。
Q: 赤潮、アオコも原因は微細藻類と聞いたが、本当か?
A:はい、ほとんどが微細藻類が原因です。赤潮は海での微細藻類の大量増殖である場合が多いです。赤潮の原因となるのはラフィド藻類、渦鞭毛藻類、珪藻類などで、種類によって赤潮と言いつつ水の色は、茶色や橙色など違っています。アオコは、湖など淡水域での微細藻類の大量増殖によるものです。淡水域での大量増殖では、水の色が緑色に変色してしまう場合、アオコ、水の華とよばれ、赤色っぽくなる時、淡水赤潮ともよばれています。アオコの原因となるのは、藍藻類(シアノバクテリア)がほとんどです。
Q:微細藻類は毒を作るのか?食べても大丈夫なのか?
A:先に説明したアオコになる藍藻類の中にはミクロキスチンという毒を産生する種類があります。もし、食べたり飲んだりしてしまったら、とても危険です!海の微細藻類にも、麻痺や下痢を引き起こす毒を産生する種類があります。海の場合、貝類が微細藻類を捕食して、毒を体内に蓄積し、その貝を人間が食べてしまった時危険です。ちなみに市販されている貝類はしっかり管理されているため大丈夫です。
Q:微細藻類はすべてω-3系脂肪酸DHA(ドコサヘキサエン酸)を作るのか?
A:すべての種類ではありません。産生する種類で有名なのは、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)、イソクリシス(Isochrysis)などです。ちなみに、ナンノクロロプシスはDHAと同じくサプリメントなどにも利用されるω-3系脂肪酸EPA(エイコサペンタエン酸)も産生します。
Q:微細藻類が石油を作ると聞いたが、本当か?
A:石油そのものを作ることはできませんが、石油と似た成分=炭化水素(炭素と水素のみでできた物質)を作る種類はいます。代表種は、ボトリオコッカス(Botryococcus)です。
Q:藻類の勉強がしたいが、どの大学へ行けば良いか?
A:いくつかの大学で藻類の研究が行われています。その際、海藻(大型藻類)を対象とした研究なのか、微細藻類を対象とした研究なのか、細胞レベル(遺伝子発現や代謝経路など)の研究を実験室で主にされているのか、野外調査を中心とされているのかなど、大学の研究室によって専門性が違いますので、ホームページなどでよく確認すると良いでしょう。
Q:クロレラ、スピルリナ、ユーグレナを育ててみたいが、購入することはできるのか?
A:はい、いくつかの公的機関で購入することはできます。私がおすすめしているのは、国立環境研究所の微生物系統保存施設(https://mcc.nies.go.jp/index.html)です。ホームページには、育て方なども詳しく紹介されています。
Q:インターネットで、クロレラ(またはスピルリナ、ユーグレナ)の粉末を購入したが、水に入れると、増やすことができるのか?
A:粉末に加工する過程で、ほとんど死んでしまっているため、残念ながら増やすことができないと思います。
Q:庭の池(水槽の水)が緑色になってしまった。どうすれば藻類を防ぐことができるのか?
A:藻類は、窒素やリンなどを“餌”として増えるため、池で鯉、金魚、水中生物などを飼育している場合、それらの生物の排泄物中に含まれる窒素やリンを利用して増えてしまいます。また、飼育生物への餌が多すぎると、餌の成分によっては藻類も利用できてしまいます。なるべく水を交換すること、飼育生物の餌の量を食べ切るだけにすることぐらいしか、微細藻類を防ぐ方法はないかもしれません。「殺藻剤(さっそうざい)」という薬品が市販されていて、効果が出る場合があります。その際、薬品なので、気をつけてご使用ください。また、藻類の種類によっては全く効果がない場合もあります。