微細藻類とは?

 微細藻類は、顕微鏡レベルの藻類です。藻類は、種子植物、コケ、シダ植物とは別の光合成をする生物です。ワカメ、昆布、ノリなどの大型の種類もありますが、種類数としては、微細藻類が圧倒的に多数です(正確な種数は不明)。

 微細藻類の生息場所は地球上ほとんどの環境です。水中は北極や南極の氷の下にも、乾燥した環境でも生息可能な種類もあります。ガードレールや建物の壁に緑色の汚れのようにへばりついている種類は、「気生藻(きせいそう)」とも呼ばれています。

 水中に浮遊して生息している微細藻類が「植物プランクトン」です。透明な水であっても、湖沼や海の水を顕微鏡で観察すると、多くの植物プランクトンが生息しているのが分かります。しかし、様々な原因で、水の色が変わってしまうほど植物プランクトンの大増殖が起こることがあります。湖沼では水の華、海では赤潮と呼ばれる現象です。その場合、悪臭を放ったり、養殖魚を殺してしまったり、人間にとって有害な生物になることもあります。

 微細藻類の中には、人間にとって有用な成分を作り出す種類もあります。すでにクロレラ、スピルリナ、ユーグレナなどはサプリメントとして販売されています。また、ヘマトコッカスという種類が産生するアスタキサンチンは赤色の色素で、紫外線予防や抗酸化作用があることが知られ、化粧品などに添加されています。その他、近年、様々な有用成分が次々に発見され、医薬品材料としての期待が高まっています。

 「微細藻類バイオマス」とは、微細藻類の細胞そのもの、微細藻類が産生する物質を含めて、生物資源として利用できる微細藻類由来の物質すべてのことです。微細藻類バイオマスの生産工程には、「優良株の探索」「大量培養」「濃縮・収穫」「有用成分の抽出」など多くの工程が必要です。

 微細藻類の多くが単細胞で、二分裂して増殖します。光合成を行い増殖しますが、二酸化炭素だけあれば良いわけではありません。窒素、リン、カリウム、マグネシウム、カルシウムなども必要です。また、鉄、亜鉛などの微量金属、ビタミン類なども増殖に関係します。

 微細藻類の培養では、光、水温、二酸化炭素の濃度、上記の多くの物質量を変化させ最適な培養条件を見つけ出さなければなりません。

微細藻類の二酸化炭素固定能

 光合成によって、二酸化炭素は微細藻類バイオマスへ変換されます。微細藻類バイオマスが、炭素含有率約50%とし、その炭素の由来がすべて二酸化炭素であると考えると、微細藻類による二酸化炭素の固定能を試算することができます。

 例えば、1gの微細藻類を培養できた時、約0.5gが炭素とします。すると、炭素の原子量12と二酸化炭素の分子量44の比率より、0.5gの炭素は1.83gの二酸化炭素に由来すると計算できます。つまり、1gの微細藻類は、1.83gの二酸化炭素を固定したと考えることができるのです。

 地球全体の海に生息する微細藻類による炭素固定量は、300~500億トンと試算されています(Falkowski 1994)。二酸化炭素固定に換算すると、550~915億トンです。これは、陸上の植物と同等の二酸化炭素固定量とされており、目立たない存在ですが、微細藻類は、地球環境へ大きな影響を与える存在といえます。

引用: Falkowski (1994) Photosynthesis Research 39: 235-258.

有用成分を作り出す微細藻類

(A)ヘマトコッカス:通常はA写真左のような細胞で二分裂して増殖します。様々なストレス環境になると、A写真右のように赤い色素を細胞内に一杯貯めます。赤い色素がアスタキサンチンです。アスタキサンチンを含んだ化粧品やサプリメントがすでに販売されています。

(B)ボトリオコッカス:細胞内に多くのオイルを蓄積します。多くの微細藻類のオイルは、中性脂質なのですが、ボトリオコッカスのオイルには、炭化水素が含まれています。中性脂質は、燃料として使用するためには様々な化学的処理が必要ですが、炭化水素は、石油代替燃料としてそのまま使用することができます。

(C)ユーグレナ:細胞に「パラミロン」という特殊な物質を蓄積します(写真の2つの赤色矢印)。パラミロンは近年いろいろな医薬的機能が実証されています。